瓦解した天井が瀑布のように崩れ落ち、耳を聾する激しい爆音が響いた。
しばらくして。
瓦礫の中に煤やら土くれやら埃やらをごっそりかぶった金髪が、かすかに動いているのを見つけ、周子は小さく安堵の息を漏らした。
「危っな。うっかり殺っちゃうとこだった」
その金髪を探して先ほどからあたりの瓦礫をあちこち掘り探っていた手を、ぱっぱっ、と払って。
周子はようやく見つけたギャランの金髪をむんずと掴むと、瓦礫の中から引きずり起こした。
ぺちぺち、とその頬を叩く。
「ほら、しっかりしてよ、さすがにタトゥーの呪主を殺したらまずい、ああ手間掛けさせんなバカ……ディオス!」
ぱっ、と癒しの白光が瞬いた。
ギャランは小さくうめくと、身体を震わせ目を開けた。
そして身を起こすなり、がはっ、とひとつ大きくむせ、血の塊を吐き出した。
不意に痛みが引いて体が楽になったその理由を魔法と悟ったか、
「ほんとうに魔法ってのはあるもんなんだな、驚いたぞ」
周子を見、無邪気に笑った。それから、今にも周子に抱きつきそうなくらいのうっとりとろけたような表情になって、
「あー……今の、すっげえ気持ち良いな。治癒魔法ってやつか。すげぇな! ありゃ、セックスするよりよっぽど気持ちイイ……がはっ!」
顎を思いっきり蹴り上げられて、再びギャランは地に転がった。
「なに言い出すのよ、こんのスケベ!」
取り合えず命があればいい、このバカあとで半殺しにしたる、と周子は吐き捨て、再びあたりの瓦礫の山を見回した。
「さて、もう一方のご尊体は……っと。ま、あんなメガネ、死んでようがなんだろうが別に構わんけど」
酷薄に笑って、周子はカズマの緑髪を探し首を廻らせ……、
その瞬間、自分の左頬に強烈な衝撃と痛みを食らった、と思ったときには、体が宙を飛んだのを感じた。
「よせ!」
ギャランの短い叫びを聞いたと思ったが、既に意識を手離している。